ずっと積読してあった本をやっと読み終わりました。
30年以上前に出版された本ですが今も読み継がれている名著と聞いて手に取ったもの。
なかなか読むのに時間はかかったのですが、応用したいシンプルな結論が面白かったのでご紹介しますね。
有利な「つきあい」はどれ?
この本では人づきあいに限らず国際関係から生物の共生まで、「つきあい」つまり関係性において協調するか裏切るかどちらが有利なのかということを科学的に分析しています。
分析の方法は「囚人のジレンマ」というゲーム理論と呼ばれる数学的なモデル。
これでコンピューター選手権を行い、色々な相手に対して信頼・裏切りという選択を重ねていきます。
囚人のジレンマで得点はこのような形で決まっていきます。
自分も信頼し、相手も信頼してくれると3ポイント。
一方で、どちらか一方が裏切ると、自分のポイントは高く、相手は何ももらえません。
これは相手に勝とうという気持ちが強いとかなり魅力的に見えますよね。
一方で双方が裏切ると、懲罰的に1ポイントづつしかもらえないという形になります。
どんなパターンの付き合い方をするプレイヤーが強いのかを検証した結果、優勝したのは「しっぺ返し」という自分からは裏切らないけど、やられたら1回やり返すというとてもシンプルな作戦でした。
「しっぺ返し」が教えてくれている教訓は以下の4つに整理されます。
勝ちパターンから見る教訓とは?
しっぺ返しが勝つことができた理由を人間関係に置き換えるとこんなことが見えてきます。
①目先の相手を羨まないこと
自分だけ一方的に勝とうとするプログラムは始めこそ調子が良くても、後から協調が引き出せなくなるため、最初からWIN-WINの状況を目指すほうが良いようです。
そしてあの人に勝ちたいという欲で、その原則を曇らせないことが重要。
「つきあい」というのは、どちらかが得をしてどちらかが損をするゲームではないということに気づくことと言えるのかもしれません。
②自分の方から先に裏切らないこと
長い目で見ると、他人の幸せのことも自分の利益の中に取り込むことで自分の評判を高められます。
人の評判ってなかなか変わらないですよね。
しかも悪いものは1回でも一気に広がり、払拭する労力はかなりのものだというのは体感的に理解できるのではないでしょうか。
あの人は裏切らない、という信頼は長い付き合いの中で時間を経るごとに重みを増していきます。
③相手の出方の通り相手にお返しすること
信頼を土台に関係性を維持することができる人にとって、自分が相手を裏切ることは心が痛むのではないでしょうか。
ただ、道徳的に正しい無条件の協調というのは搾取という戦略をのさばらせることにつながるので、協調であれ裏切りであれ互恵主義は他人の利益にもなるということを思い出す必要があります。
国際関係の核抑止というのは、どれだけ核兵器が非人道的なものだと分かっていても、もし核を使ったら、確実に相手から核で報復されるという「しっぺ返し」の法則があるからこそといえますね。
悪い奴には「しっぺ返し」というのが勝者の最大の戦略でした。
④策に溺れないこと
裏切ると必ず 報復されるという単純な作戦は相手に理解されやすいので、抑止になります。
このパターンでは裏切るけど、このパターンならば信頼という複雑なしっぺ返しパターンを持っているプレイヤーは勝てませんでした。
相手にとっての分かりやすさも「つきあい」においては大切なんですね。
これは子育ても同じで、いつも「ダメ」と言われているのに、人やシチュエーションが変わると基準が甘くなると子供は混乱したり、味をしめたり、抑止がきかなくなるということにもつながるかもしれません。
まとめ
いかがですか?
「しっぺ返し」は目の前の相手よりも高い点を取ったことは一度もなかったのに、どんな相手とも大負けすることはなく、そこそこうまくやれたそうです。
ゲーム理論のプロたちがありとあらゆる作戦で戦った中で、単純明快な「しっぺ返し」が総合優勝したのは対戦相手をやり込めたからではなく、相手から協調を引き出したからという分析がとても面白いなと思いました。
長くつきあう、頻繁につきあう場面こそ協調関係が現れ、維持されるそうですよ。
ダイバーシティが大切だと言われていますが、分からない相手とだからこそ、WINWINの信頼関係を主体的に作ることや、信頼には信頼、裏切りには裏切りという明確な「フィードバック」を心掛けたいですね。
家族やご近所、職場などありとあらゆる「つきあい」にもぜひ応用してみてください(^^)